午後半休(有休)を申請したけれど、午前の勤務が1時間のびてしまった場合はどうなるのでしょうか?
その1時間は残業になる?労働時間にしないと労働基準監督署から怒られてしまう?人事担当者であれば、こんなことを悩んだことはありませんか?
特に、近頃は勤怠管理システムの導入や柔軟な働き方の実現にあたって、あらためて半休時の労働時間の取り扱いを整理したいとのご質問が増えています。
【条件】
就業規則上の有給休暇の規定が下記の場合を考えてみましょう。
所定労働時間:9:00-18:00(12:00~13:00休憩)
午前有休:9:00~12:00
午後有休:13:00~18:00
【例1:午後有休を申請したが、午前の勤務が伸びていまい、14:00まで勤務し、その後帰宅した】
この場合、午後半休を与えたことにならないことになります。
まずは、原則の1日単位の年次有給休暇について考えてみましょう。
労働基準法では、休暇1日とは、暦日(0:00~23:59)を指すため、この間に1時間でも勤務が発生している場合は有給休暇を与えたことにはなりません。
半日単位の有給休暇についても同様の考え方です。
もしも午後半休(13:00~18:00)を請求していたのに、その間に勤務させたのだとすれば、半休を与えたことにならないからです。
有給休暇は労働者が請求したら請求された時季に与える必要があります。請求された時季に与えていないことにもなります。
では、実務上どういう扱いになるかといえば、その日の半日休暇は取り消しとなり、下記のいずれかの対応をとることとなります。
・その日は14:00まで勤務、その後早退として賃金控除を行う
・14:00以降は有給の勤務免除とする(ただし、年次有給休暇(半休)を消化したことにはなりません。年次有給休暇とは別の取り扱いとなります)
【例2:午前半休で午後出社し、定時を超えて勤務した場合の給与計算はどうなるのか】
例えば、午前半休し、13:00~20:00まで勤務した場合は
午前半休分:9:00~12:00 の3時間分
午後勤務分:13:00~20:00の7時間分
合わせて10時間分の賃金が発生することになります。
有給を取得した時間については、給与計算においては、通常労働したのと同じものとして扱う必要があります。ただし、実際に労働した時間は7時間であり、8時間を超えているわけではありませんので、割増賃金を払う必要はありません。
つまり、18:00~20:00までの時間については、時給換算した額×1.0分の賃金を払えばよいということになります。
もちろん、通常の割増賃金の計算と同様、1.25時間分支給することとしてもかまいません。(法律を上回る措置ですので)
実務上は、半休かつ定時を超えた場合の扱いについては、実働8時間以内であっても通常の残業と同様の割増賃金の対象としているケースも珍しくありません。何故なら、×1.0にするのか、×1.25を切り分けて集計することの方が大きな手間が発生するからです。
【例3:午前半休を取得し、午後の勤務に遅刻した場合について】
午前半休を取得し、午後の勤務に遅刻して、14:00~出勤した場合はどのようになるのでしょうか?
13:00~14:00の時間については遅刻となります。この分については、遅刻として賃金控除の対象としてもよいですし、控除しないこととしても構いません。就業規則の決まりに従うこととなります。
どうしてこんなに厳密に計算しなければならないのか
それは、労働基準法がしちめんどうくさいからです。
しかしながら、今までにも「午後半休を申請したが、業務のキリが悪いのでちょっと午前の勤務をはみ出るけど仕事を終わらせてから帰りたい」というようなことはあったと思いますが、これまではあまり意識しないで済んできたのではないかと思います。
それは、それほど頻度が多くないことや、その都度人事ご担当者が状況を把握し「ケースバイケース」で「柔軟な対応」をすることができていたからです。
しかし、勤怠管理システムを導入するとなると話は別です。システムには「ケースバイケース」は通じませんし、「柔軟な対応」を行うことはできません(されても困ります)。
ですから、システム化するのであれば、これまで人事担当者がその都度判断していたことをルール化して、システムに覚え込ませることが必要になります。
そのためには、半休取得時のルールについて、
「労働基準法上はどうなっているのか」
「それを踏まえてどのようにシステム設定を行うのか」
という2つの要素を理解している必要があります。
これは非常に専門性の問われる難しい作業であり、労務管理、かつシステム設定、両方に熟知している必要があり、人事ご担当者様が一人で行うにはあまりにハードルの高い作業です。
だからこそ、勤怠管理システムの設定においては
「ITと労務管理に詳しい社会保険労務士」にサポートを依頼するのが近道です。
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