※この記事は2020.11.24時点の厚生労働省及び日本産業衛生学会の情報を元にしています。
新型コロナウイルスの感染者が再び増加しています。
社内で、感染者はもちろん、感染には至らなくても体調不良の従業員がでたらどうしたらよいのか?そんなことでお悩みではないでしょうか。
これまでに既に万全の体制が構築・運用されているのであればよいのですが、緊急事態宣言発令時は、とにかくその場を乗り切ることに必死で、無我夢中で動き回っているうちに幸い感染者も発生せず、この時期までたどりついた、という人事担当者の方も少なくないのではないかと思います。
しかしながら、突然の従業員からの感染報告、という危険はなくなったわけではなく、その危険は再び高まりつつあります。また「感染には至らないけれども体調不良の従業員」に対しての対応、が人事担当者の課題になってくることでしょう。季節柄、新型コロナウイルス以外の(?)体調不良も発生しやすい時期となってきます。
体調不良の従業員が発生したら?家族に新型コロナウイルス感染が確認されたら?
あなたの会社ではどのように対応するか、ガイドラインは定めていますか?
今、この時期だからこそ、改めて対応を確認しておく必要があります。
まず作っておくべき体制
当面は、風邪等の症状があったら、コロナウイルスに感染していることを想定した対応をとることができるような体制を作っておく必要があります。無症状感染や当初は重症化していないケースもあり、判断がつかないからです。感染かも?そんな従業員が発生する前に、整備しておくべき体制は次の内容です。
従業員の体調管理と把握のルールを共有
次のようなルールを作り、実施しておきましょう。
・朝夕に自宅で体温測定、報告してもらうこと
・または、会社に非接触型体温計を設置し、出社時に検温を必ずしてもらうこと(記録する)
・体温が何度くらいになったら自宅待機とするかの基準を定めておきましょう。どのように決めるかについては、例えば次のようなものが考えられます。
平熱より1℃高い場合
37.5℃以上の場合
体温に変化がなくても咳、その他の体調不良の症状がみられる場合
・医療機関受診、相談機関への相談の目安を共有しておきましょう。現状では、体調不良を感じたら速やかに最寄りの医療機関に行ってもらうのがよいでしょう。
相談機関等への相談の目安として、厚生労働省からは次のようなものが示されています。(「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」より)
☆息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
☆重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
☆上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
在宅勤務制度の拡充
後にご説明いたしますが、仮に体調不良、濃厚接触、行政からの自粛要請、等が発生した場合に求められるのは長期にわたる「自宅待機」です。
しかしながら、自宅待機の対象者が増えたり期間が長期化すれば、それに伴う休業手当等の会社の負担も大きくなります。雇用調整助成金で補填ということもできなくはないですが、手続は煩雑ですし、来年以降制度がどのようなものになるかは現段階では不透明です(2020.11.23時点)。何より、事業継続を考える上で、業務が回らない事態にもなるでしょう。
ですから、自宅待機時の「在宅勤務」をスムーズに行うことができような体制を作っておくことが非常に重要になります。
従業員教育
次の内容について、従業員教育またはメール等で改めての周知を行いましょう
・発熱がなくても体調不良の場合は報告相談すること
・日々の行動記録をつけてもらうこと(万が一感染が発生した場合に行動範囲を特定する必要があるためです)
管理者教育
・従業員教育の内容について、部下を管理してもらうよう周知しましょう
・部下からの体調不良に関して、気兼ねなく相談、休みが取れる状況をつくるよう、全社周知を図ると共に管理者いも協力をあおぎましょう。
ハイリスク従業員への配慮体制
・高年齢者、持病がある従業員、などがいるか改めて確認しておきましょう
・ハイリスク従業員への配慮体制として、時差出勤、在宅勤務、不特定多数との接触の少ない業務への配置転換等の可能性等について事前に調整しておきましょう
オフィスレイアウトの変更
ソーシャルディスタンスを意識した職場レイアウトを確認しておきましょう
事前に確認しておくべきこと
次の内容について、事前に確認しておきましょう。
・保健所との連絡対応担当者を決めておく
・フロアの見取り図を作成しておく
・テレワーク規程(在宅勤務制度)の整理
・体調不良、濃厚接触、感染等の場合の待遇、自宅待機の基準、指示命令のフローをつくる
具体的な判断基準は次からご説明いたします。
賃金・休業手当関連
従業員が感染した場合
・保健所の指示に従い休業となります。ここは選択の余地がありません。
・「労務不能」の状態となるため休業手当の支払義務はありません。
・健康保険の「傷病手当金」の対象となります。
・「雇用調整助成金」は対象外です。
感染は確認できないが体調不良の場合
1)労務不能(業務ができないほど)の体調不良の場合(※)
休業手当の支払義務はありません。
2)労務不能とまではいわないが体調不良の場合
⇒自主欠勤する場合
休業手当の支払義務はありません
⇒会社が自宅待機を命じる場合
休業手当を支払う必要があります
⇒在宅勤務を命じる場合
在宅勤務規程に則った賃金を支払います
原則として、業務ができないほど体調が悪い場合は休業手当の対象となりません(通常の病欠とおなじです)。しかし、「業務ができないほどの体調不良」の基準が難しいところです。
一般的には、次のような例が見られます。
37.5℃以上の発熱⇒労務不能
37.5℃未満ではあるが平熱より1℃以上高い⇒自宅待機(会社命令)
これについては個別の事情が求められることにもなります。
自主欠勤の場合、休業手当については法律上の義務とまではいえなくなる可能性が高いですが、実務上は会社命令の休業と同じように扱う方が妥当ではないかと思います。そうしないと、頑張って出勤してしまったりということが発生し、感染リスクを抱えることになるからです。
休業を命じる場合は「雇用調整助成金」の対象となります。
従業員が濃厚接触者となり、保健所等からの外出自粛要請が出された場合
濃厚接触者には保健所等から少なくとも14日間の外出自粛の要請が出されます。この場合は出社を禁じる措置をとることをお勧めいたします。この場合の賃金の取り扱いは、労務不能とまではいわないが体調不良の場合、と同じです。
⇒自粛要請に従い自主欠勤する場合
休業手当の支払義務はありません
⇒会社が自宅待機を命じる場合
休業手当を支払う必要があります
⇒在宅勤務を命じる場合
在宅勤務規程に則った賃金を支払います
感染の事実がないのに会社が休業させる場合は休業手当の支給が必要となります。
自主欠勤であれば休業手当の支給義務はなくなります。しかし、14日の欠勤(無給)は従業員からすると非常にインパクトが大きいです。下手をすると、濃厚接触者であることを隠して就業するかもしれません。そのようなリスクを回避して、会社全体の安全を守るためには、濃厚接触者であることが判明した場合は会社からの休業、または在宅勤務命令をとるほかないでしょう。
なお、休業を命じる場合は「雇用調整助成金」の対象となります。
行政からの自粛要請等の場合
・休業手当の支給義務については業種や状況によります。
・しかしながら「支給する」対応をとられることをお勧めいたします。
・現状「支給しないでよい」と判断されるケースは極めて限定的であること、また、そうだったとしても、いくら法的に支給しないでよいとされることとなったとしても、従業員側からみれば納得のできるものではないと想定されるからです。
休業手当を支給しなければならない場合の資金はどうするべきか
感染予防のためには休業手当を支給して従業員に休んでもらった方がいい。
分かってはいるけれど、資金的な問題もある。働いていないのに賃金だけ払うことに耐え続けられない、そういう意見があることはもっともだと思います。
このような場合は「雇用調整助成金」を検討することになります。
自宅待機期間の目安は?
感染予防のためには自宅待機が望ましい。では具体的にはどのくらいの期間、どのような対応がよいのでしょうか?
従業員が感染した場合は保健所や医療機関の指示に従う他ありませんが、悩むのは「感染は確認されないけれども注意を要する従業員への対応」なのではないでしょうか。
発熱・風邪症状がある場合(感染は確認されない場合)
・職場復帰の目安は次の2つの条件を満たすこと、とされています
(「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」日本産業衛生学会より)※掲載終了
1)発症後に少なくても 8 日が経過していること
2)薬剤 を服用していない状態で、解熱後および症状消失後に少なくても3日が経過していること
なかなか長い期間となりますよね。
ですから極力在宅勤務制度を活用したいところです。
従業員が濃厚接触者となった場合
・濃厚接触者となった場合、PCR検査が陰性でも新型コロナウイルス感染症患者と接触があった日の翌日から14日間14日間の健康観察期間として外出自粛が要請されます。
・この期間は会社側からも自宅待機を命じるのがよいでしょう。
※「濃厚接触者の方へ」(東京都福祉保健局)※掲載終了
具体的に自社ではどのようにしたらよいかを知りたい場合
ここまで新型コロナウイルスに関連する対応について一般的な内容をご説明してまいりましたが、業種、状況等によって詳細判断が異なり、「ではいったい自分の会社ではどうしたらいいの?」「うちの業種では?」と、実際に自社での対応を検討するには一般的な情報提供だけでは判断が難しいのが現状です。
一般的な内容を元に、個別の従業員に対する対応を考えなければなりません。
「で、うちの会社ではどうしたらいいの?」というところでお困りの方、「自分の会社のための解決策」を一緒に考えてほしい、という方は、スポットのオンライン相談を承っております(初回1h 10,000円)。
下記のフォームよりご連絡ください。
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参考リンク
■「新型コロナウイルスについての受診の目安」(厚生労働省)
■「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」(日本産業衛生学会)※掲載終了
■「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(厚生労働省)
■「濃厚接触者の方へ」(東京都福祉保健局)※掲載終了