就業規則提出や労使協定を締結する際の「従業員の過半数代表」の選び方と運用のポイント

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就業規則提出や労使協定を締結する際の「従業員の過半数代表」の選び方と運用のポイント

就業規則を労働基準監督署に提出する際や、労働基準法に基づく三六協定(時間外・休日労働に関する協定)をはじめとする労使協定を締結する際には「従業員の過半数代表の選出」を行う必要があります。しかし、適切な手続きで選出しないと、協定自体が無効となってしまう可能性があるため注意が必要です。

労働基準監督署に電話をすればそこそこの回答は得られます。

しかし、実際他社ではどうしているの? 正しい選出方法ってなに?会社がお願いした人じゃだめ?毎回選ぶ必要があるの?同じ人にお願いし続けてもよいの? 等、やってみようとすると様々な疑問があることと思います。そこで、よくある疑問を解決できるようここだけの実務上のポイントを解説します。

※従業員の過半数を占める労働組合がある場合には労働組合の代表が「従業員の過半数代表」となるため選出手続は必要ありませんが、本記事では労働組合がない場合について解説します。

1.過半数代表の選出はどんな場合に必要となるのか

主には以下の2点です。

①就業規則を労働基準監督署に提出するとき
②労使協定を締結するとき

具体的に説明します。

①就業規則を労働基準監督署に提出するとき

就業規則を作成したり改訂したりして労働基準監督署に提出を行う場合、「従業員の過半数代表者の意見」を聴いて、その内容を「意見書」として添付する必要があります。この場合の当事者となってくれる方が必要となります。

②労使協定を締結するとき

労使協定とは「使用者と労働者代表の間で取り交わす書面による契約」のことです。

法の枠内だけでは、法令を守れないような働き方をする場合に、労働者と使用者の双方同意の上で、一部法令の適用除外とすることを目的としています。

例えば、労使協定で最も有名なものと言えば三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)があげられますが、これについては、本来なら週40時間を超える労働は違法であるものを、労働者と使用者の合意によって、一定時間まで労働できるように定める、というものとなります。

労使協定を定めなければならないものは法令でいくつか定められており、三六協定以外には「フレックスタイム制にかかる労使協定」「裁量労働制にかかる労使協定」「育児介護休業の除外にかかる労使協定」などがあります。

2. 過半数代表とは?

「過半数代表」とは、労使協定を締結する際に、従業員の過半数の支持を得た代表者のことを指します。

会社が一方的に指名している例が見られますが、労働者の意向を反映した選出が必要です。三六協定だけでなく、フレックスタイム制の労使協定、年次有給休暇の計画的付与に関する協定など、様々な場面で必要になります。

会社が指名する場合は、会社が指名した人について従業員の過半数の信任を得る手続きが必要となります。

3. 過半数代表の選出方法

適切に選出しなければ、労使協定の有効性が問われる可能性があります。最近では三六協定の締結における過半数代表の選出について労働基準監督署より是正勧告を受ける例も見られます。以下のポイントを押さえて選出しましょう。

選出のルール

■管理監督者でないこと

「管理監督者」は過半数代表にはなれません。
ただし、この管理監督者とは「労働基準法上の」管理監督者であり、社内の「課長以上」だからNGというわけではありません。

労働基準法上の管理監督者については複雑ですのでこちらをご覧ください

■従業員の過半数の支持を得ること

会社が頼みやすい人に「ねえねえ、ちょっとやってよ」と頼んで対応しているケースが見られますが、会社が一方的に決めるだけであるのはNG。過半数の労働者が支持していることが必要です。

■適切な方法で選出すること

選出方法には、以下のような方法があります。

・投票(もっとも公正な方法)
・挙手による決定(簡易的な方法)
・立候補と信任(立候補者を募り、過半数の支持を得る)
・会社が指定した人への信任(会社が指定した人に対して過半数の支持を得る)
・持ち回りアンケート(事前に候補を決め、支持の有無を確認)

選出方法と過半数以上の信任を得ていることについては、記録を残しておくことが望ましいです。

これらの方法を使い、公正に選出しましょう。

4. 過半数代表は毎回選ばなければならないのか?

「労使協定を締結するたびに毎回選ぶ必要があるのか?」という質問をいただくことがあります。

原則としてはそうなりますが、「任期付き選出」を行うことによって毎回選び直さなくてすむようにすることも可能です。

具体的には、過半数代表選出の際に、以下を明らかかにして選出手続きをとります。

・任期を定めること(期間の明記。1年がおすすめ)
・任期中に締結されるすべての労使協定、就業規則の意見書作成について、過半数代表者となること。

「1年」というのは法で定められているものではありませんが、任期が長すぎると、信任が形骸化していく可能性がありますので、一定期間毎に信任手続きをとることが好ましいでしょう。その期間として、年単位、年度単位、が最も扱いやすく忘れない、ということになります。三六協定締結のタイミングで毎年再信任手続きを行う、というのもよいかもしれませんね。

任期中であっても、以下のような場合には再選出が必要となるので注意が必要です。

・代表者が退職・異動した場合

・労働者の構成が大きく変わった場合
  新規採用や大量離職により、労働者の過半数が変わった場合、以前の代表が現在の従業員の支持を受けているとは言えなくなる。

・協定ごとに代表者を変える必要がある場合
  特定の部署や職種ごとの協定では、適切な代表者を選び直す必要がある場合も。

5. 同じ人にずっとお願いしてもいいのか?

定期的に再信任の手続きを行い、過半数の支持を得ていれば問題ありません。

6. まとめ

過半数代表の選出は適切な手続きを踏むことが重要であり、形だけの代表では認められません。

過半数代表の選出を適切に行い、スムーズに運営できるようにしましょう!

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