【人事異動と出向】従業員の部署異動を命令できますか?

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【人事異動と出向】従業員の部署異動を命令できますか?

人事異動と出向

第@条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

※厚生労働省モデル就業規則より。

あれ、普通、会社って、人事異動あるよね?
出向も、まあ聞く話だよね?

と思われた方。いい疑問です。

どうしていちいち就業規則に書く必要があるのでしょうか?

会社が社員に部署異動を命じるには?

会社は従業員を雇い入れる際に、「労働条件通知書」を書面で渡して、会社と従業員との間で、労働条件を明確にする必要があります。(労働基準法第15条)

この明示しなければならない項目の中には
「3.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」
が含まれています。

ということは「どこで働くのか」「どんな業務を行うのか」は、会社と従業員の重要な労働条件の約束事項である、ということです。

ですから、当初の労働条件として、特定の勤務地、職種などを約束していたのであれば、それと異なることを行うのであれば、当事者同士の合意が必要であり、従業員からの承諾がなければ一方的な約束の変更(=つまり配置転換や職種変更)ができない、ということになってしまいます。

しかし、業務の都合や経営戦略上、会社の命令により人事異動を命じることが必要な場合もあるでしょう。これを有効にするためには、就業規則にて明記しておくことが必要です。

とはいえ、日本の労使慣行からいっても、特定の部署や職種に限定せずに経験を積んだり、他部署を知るという意味でも、配置転換等は広く行われてきました。ですから会社の人事裁量権の一部として認められているという考え方もありますし、これがなければ全く認められないのかといえば一概にそうとまでは言い切れません。(当初の契約内容=労働条件通知書の書き方によっても判断は変わってきます)

しかし、従業員側からみた場合のわかりやすさ、トラブル防止という観点からも、就業規則にて明記しておいたほうがよいでしょう。

出向

会社命令による出向が認められるためには

・本人の合意がとれていること

または

・就業規則に出向の規定があること

が必要です。

出向は、従業員の労働環境が大きく変化することになるため、本人に与える負担は大きいものです。ですから、実際に出向命令を行う際は改めて本人同意や出向に当たっての条件を取り交わすことにはなりますが、会社の基本的な方針として、出向が行われるのはどのような場合で、その際の待遇がどうなるのか、これらについては事前に従業員側も理解できるよう、就業規則で共有しておく必要があります。

また、出向には在籍出向と転籍出向の2種類があります。

・在籍出向とは
従業員としての籍を残したままで出向先の会社とも雇用関係を結ぶこと
(2社との二重契約となるイメージです)
・転籍とは
会社と従業員の雇用関係を終了し、新たに転籍先との雇用関係を結ぶこと
(ほぼ、転職のイメージです)

これら双方について明確に定めておくことも必要となります。

就業規則に書いてあれば一方的な命令が可能なのか

では、就業規則に書いてあれば従業員に何でも一方的に命令できるのでしょうか?

この場合でも、従業員本人が納得できる説明や、合意をえる努力はもちろん必要ですし、育児や介護の配慮等の家族事情も考慮すべきであることはいうまでもありません。

就業規則は、従業員を一方的に会社の思い通りに動かすための道具ではありません。会社の業績向上のための、事業目的を達成するためのツールです。

会社の業績向上のためには、会社が一定権限を持てるようにしておくことはもちろん必要ですが、それによって従業員の働くモチベーションがなくなってしまうようなものであれば、業績向上にはつながりません。

恣意的(と従業員が感じる)な人事権の行使は、従業員との信頼関係を損ねます。会社への信頼を失った従業員は、決してその会社のためには働きません。

人事異動や出向について、納得できないという相談は非常に数多く、人事権の濫用として民事的紛争に発展するケースも非常に多いものです。

だからこそ、就業規則に書いたからOKなのではなく、異動や出向等について、理解が得られるよう、説明する努力をすることが非常に重要となります。

就業規則に定めたルールとその有益な使い方について、officerole がご相談お受けいたします。

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