労働者には何時間働いてもらってよいのか
「うちは@@業だから、1日10時間は働いてもらわないと。」
「この業界は土日休みなんて無理だから。休みは日曜日だけだよ。」
よく聞かれる言葉ですが、労働基準法では、労働者に働いてもらってよい時間が決まっています。
残業してもらう場合のお約束とは
労働基準法上、労働者に働いてもらってよいのは
■1日について8時間
■週について40時間(※)
※商業、映画の製作、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で従業員10人未満の事業場は44時間でもOKです
※変形労働制という仕組みを使うと、特定の場合には1日8時間、週40時間を超える労働時間を設定することも可能になりますが、変形労働制の導入には注意が必要ですので専門家にご相談を。
となっています。これを法定労働時間と呼びます。
この時間を1分でも超えたら「違法な時間外労働」となってしまうんです。
でも、現実問題、どうしてもこの時間では収まらない場合もありますよね。
そのような場合は、従業員の過半数代表、または過半数で組織される労働組合の代表者と、「何時間まで時間外労働させてもいいよ」という数字を決めて、書面による協定を結ぶことにより、その時間までは法定時間を超えて時間外労働をしてもらうことが可能、つまりは「@時間までだったら時間外労働させても違法とはしないであげるよ」ということになっています。
この協定のことを「三六協定」と呼びます。
非常に簡単な図にすると、下記のようになります。
三六協定は労働基準監督署に届出をする必要があります。
労働基準監督署に提出した日以降が有効となりますので、提出が遅れると遅れた部分については無効になってしまいますのでご注意ください。
三六協定で定めれば、何時間でも残業してもらうことが可能なのか?
■時間外労働の上限時間(原則)
時間外として設定できる時間には、ひと月45時間、年360時間までとなっています。(建設、運輸等、上限の制限を受けない業種も一部あります。)
■原則では間に合わない場合は?
その時間ではどうしても収まらないような臨時的な特別な事情がある場合は、「特別条項」というものを設けることによって、さらにそれを上回る時間、働いてもらうことが可能になります。この場合も、特別条項内で、何時間まで働いてよいのか、年間何回まで可能になるのかを労使協定の中で定めることになります。
特別条項にも上限時間が設定されており、次のようになっています。
時間外労働 | 年720時間以内 |
時間外労働+休日労働 | ひと月で100時間未満※ |
時間外労働+休日労働 | 「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内 |
※特別条項がなく、原則の三六協定の時間の範囲内だったとしても、時間外と休日労働の合計は100時間未満である必要があります。
上限時間だけでなく、回数も決まっています。
月45時間を超える時間外労働が発生する回数 | 年6回以下 |
従業員10名未満だからやらなくてよい?
よくあるのは、
「うちは従業員10名未満だからやらなくていいんでしょ」
というお返事です。
法定労働時間を超えて働いてもらう場合は、従業員が1人でも、三六協定は必要です。
少人数のパートのみの飲食店でも、アシスタントのスタッフ1人の美容室も、必要です。
従業員10名未満に作成義務がないのは「就業規則」のことであり、三六協定には人数による免除はないので注意が必要です。
長時間労働管理の超重要キーワード「三六協定」
最近、長時間労働問題を背景に労働基準監督署による監督が厳しくなってきていますが、三六協定は、必ず確認されます。
しかも怖いのは、三六協定がないまま時間外労働させているというのは、非常に明確に「労働基準法違反」を指摘できるということです。書類送検される例も増えてきています。
適正な手続きをとった上での残業は適法です。
適正な手続きをとらないでの残業は違法行為です。
「うちみたいな規模の会社はまだいいよ」
ではなく、小規模事業場であればあるほどなおさら対策が必要です。
三六協定ってなに?
という事業主さんがいらしたら、今すぐご相談を。
もっと詳しく知りたい方向け
では、これらの根拠は何?もっと詳しく知りたい、という方はこちら。
法律上はこんな風に書かれているんです。
労働基準法上の労働時間の原則(労働基準法第32条)
(労働時間) 第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。 ② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。 |
これを超えて働かせると「違法」になってしまう、ということになっています。
労働基準法上の休日の原則(労働基準法第32条)
(休日)
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
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だから、上記の休日を与えなければならない、ということになっています。
でも、次の記載をすれば、定められた時間を超えても、協定した時間までは違法にはしないであげるよ、というのが下記の条文です。これが三六協定、なんですね。
(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
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ご参考までにどうぞ。