欠勤や不就労時間が発生した場合の賃金の取り扱いについて、あなたの会社では正しく対応できていますか?
在宅勤務における中抜け時間の取り扱い、育児短時間勤務による短時間勤務、メンタルヘルス不調による欠勤——。労務トラブル対応や多様な働き方への対応が進むにつれ、「勤務していない時間」の取り扱いについて改めて見直さなければならない場面が増えています。特にIT企業の人事担当者であれば、「柔軟な働き方」の実現を求められることが多いですからなおさらでしょう。
結論として、正社員・月給制の社員であっても、遅刻・早退・欠勤などの不就労時間については賃金を控除することができます(ノーワークノーペイの原則)。ただし欠勤控除の計算方法は法律で定められていないため、会社ごとにルールを決めて就業規則に明記する必要があります。
不就労時間とは何か・欠勤控除はなぜできるのか
不就労時間(=所定労働時間内において実際には労働していない時間)とは、遅刻・早退・私用外出・欠勤などが該当します。
「正社員で月給の場合は給与を控除してはならない」と思っていた、という声を聞くことも珍しくありません。しかし、ノーワークノーペイの原則(=働いていない時間について賃金を支払う義務はないという考え方)により、不就労・欠勤控除を行うことはもちろん妨げられていません。
実は、不就労・欠勤控除のやり方には法律上の定めがありません。だからこそ、会社ごとに決める必要があるのです。
欠勤控除の計算方法はどうするか
厚生労働省モデル就業規則の定め
厚生労働省のモデル就業規則では、欠勤控除について次のように記載されています。
| (欠勤等の扱い) 第@@条 1.欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。 2.前項の場合、控除すべき賃金の1時間あたりの金額の計算は以下のとおりとする。 (1)月給の場合 基本給÷1か月平均所定労働時間数 (1か月平均所定労働時間数は割増賃金の算式により計算する。) (2)日給の場合 基本給÷1日の所定労働時間数 |
|---|
※厚生労働省モデル就業規則より。
モデル就業規則のままだと生じる問題
モデル就業規則では1ヶ月平均所定労働時間で時間単価を算出しますが、このままだと実務上の不具合が起きることがあります。なぜなら、1ヶ月平均所定労働時間とその月の実所定労働時間が異なるからです。
ケース1:平均所定労働時間 > その月の実所定労働時間の場合
・月給:160,000円
・1ヶ月平均所定労働時間:160時間
・その月の実所定労働時間:152時間
この月に1日も出社しなかった場合の欠勤控除額:
(160,000円 ÷ 160時間)× 152時間 = 152,000円
1日も出社していないのに、8,000円が支給されてしまいます。
ケース2:平均所定労働時間 < その月の実所定労働時間の場合
・月給:160,000円
・1ヶ月平均所定労働時間:160時間
・その月の実所定労働時間:168時間
この月に20日(160時間)欠勤して1日(8時間)だけ出社した場合の欠勤控除額:
(160,000円 ÷ 160時間)× 160時間 = 160,000円
1日出社しているのに、給与が全額控除されることになってしまいます。
問題の対処方法はどれがよいか
対処方法1:10日前後で計算式を分ける(控除方式/加算方式)
・欠勤が9日以下の場合 → 控除額を控除する(控除方式)
・欠勤が10日以上の場合 → 勤務した分を加算する(加算方式)
(10日でなくても、会社で日数を定めて構いません)
メリット:時給単価を固定できる。先ほどのケースのような問題が起きない。
デメリット:欠勤日数が10日前後の境界線付近で不均衡が生じる。給与計算システムへの自動設定が困難で計算が面倒になる場合がある。
対処方法2:実所定労働時間で時給単価を算出する
欠勤控除の単価を算出する際に、その月の実所定労働時間を使用する方法です。
メリット:何日・何時間休んでもどのパターンでも正確に対応できる。給与計算システムで自動計算式を組める場合は自動設定が可能。
デメリット:月ごとに控除単価が変動する。自動計算設定ができない場合は計算が面倒になる。
月ごとに控除単価が変動することへの違和感もありますが、月給制であれば月31日の月も28日の月も月額固定なのですから、毎月時給単価はそもそも変動しているという考え方もあります。
どちらのやり方も特徴があります。給与計算ソフトの特徴、会社の事務フロー、欠勤控除が発生する頻度などを勘案して、運用しやすいやり方を決めておくことが必要です。
手当の控除はどう扱うか
家族手当・役職手当の取り扱い
厚生労働省のモデル就業規則では、基本給については控除の記載がありますが、諸手当については何も記載されていません。記載がなければ「満額払う」ということになりますが、それでいいでしょうか。
・仮に1日も出社しない月があっても満額支給しますか?
・1日も出社しない月は支給しないけれど、1日でも出社した月は満額支給しますか?
・出勤した日数で日割支給しますか?
家族手当は「働いたことに対して支給するもの」ではなく、「家族がいるということ自体に対して払う」という考えで支給するという考え方もあります。その手当は何のために払うのか、という会社の哲学が問われる場面です。いずれの方法も誤りではありませんが、就業規則に明確に定めておくことが重要です。
通勤手当の取り扱い
すでに定期券を購入している場合は控除できないとお考えの方もいらっしゃいますが、これも定め方によります。定期券での支給の場合に日割控除するか、切符代で精算するか——これらを就業規則に明確に定めておく必要があります。
不就労控除は奥が深い
不就労時間や欠勤に対する賃金控除のやり方は「法に定めがない」からこそ、どれが正しいという答えはなく、会社の考え方・給与計算システムの設定・事務作業フローまで考慮が必要となるものです。
しかも「法に定めがない」と言いながらも、「控除しすぎはだめ」という点は明確です。例えば1日しか休んでいないのに給与を半分以上減額すれば、それは当然問題になります。
このような「法に定めのない部分」について「自分の会社ではどうするか」を一緒に考えるパートナーが、社会保険労務士です。当事務所であれば、会社のポリシーはもちろんのこと、人事担当者の事務作業効率化まで想定したアドバイスが可能です。
「答えのない問題」を「あなたの会社のために」「法的知識をベースに」「一緒に」考えてくれる相談相手として、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
正社員(月給制)でも欠勤控除はできますか?
できます。「正社員は月給だから控除できない」というのは誤解です。ノーワークノーペイの原則に基づき、働いていない時間に対して賃金を控除することは適法です。ただし計算方法を就業規則に明記しておくことが必要です。
不就労控除の計算方法は就業規則に必ず書かないといけませんか?
法律上の明確な義務はありませんが、定めがなければトラブルのもとになります。控除単価の算出方法・手当の扱い・通勤手当の扱いなどを就業規則に明記しておくことを強くお勧めします。
欠勤控除と減給の制裁は違いますか?
異なります。欠勤控除は働いていない時間分を控除するものです。減給の制裁は労働基準法第91条に規定された懲戒処分の一種で、1回の額が平均賃金の半日分を超えることができないなどの制限があります。両者を混同しないよう注意が必要です。
在宅勤務中の中抜け時間も欠勤控除の対象になりますか?
中抜け時間の取り扱いは就業規則・テレワーク規程の定め方によります。中抜けを「不就労時間」として控除する方法と、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げで対応する方法などがあります。テレワーク規程の整備と合わせて、自社に合ったルールを設計することをお勧めします。
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