ひとり人事からの脱出
「健康診断の受診率があがらない」「長時間労働対策っていきなり言われたって・・・」「いつも期限を過ぎても提出物が集まらない」といったことにお悩みの人事の担当者はいませんでしょうか?
中小企業では、経費削減と人手不足の中、人事・総務等の業務がひとりの担当者に任されていることがあります(以下「ひとり人事」)。それなのに、業務の性質上、給与や評価、その他の個人情報を取り扱うことから、席やフロアそのものが他部門とは別に設置されているケースもあり、ただでさえコミュニケーションが疎遠になりがちです。
知っている間柄ならばうまくいくけれど、顔の見えない関係だからこそ話がこじれる、といったご経験がある方はいるかと思います。このような状況下で職場改善を進めていくには、まずはひとり人事がひとりから脱出し、他社員との信頼関係、協力関係を築いていくことが必要となります。
といっても、どうやって進めていったらよいのでしょうか?ここで活用していきたいのが「衛生委員会」です。なぜかというと、法律で求められている衛生委員会の要件や審議事項などのルールが、これらの対策を考える上で非常に役に立つ仕組みになっているからです。
衛生委員会とは?
衛生委員会とは、労働安全衛生法にて、従業員50人以上の事業場で、従業員の健康、衛生などについて話し合うために、月1回以上の開催が義務づけられているものです。なお、平成27年12月から義務化されたストレスチェックにおいても、衛生委員会での審議が求められています。
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衛生委員会はひとり人事の心強い仲間
衛生委員会には、ひとり人事の心強い味方となりうる下記のような特徴があります。
■メンバーが、会社側、従業員側双方で構成される(しかも半数以上は従業員側代表)
■毎月1回以上開催義務がある
■議事録は公開する義務がある
つまり、毎月1回、必然的に従業員と会社との双方向のミーティングを行うチャンスがあるということです。これにより、人事と他部門社員とのコミュニケーションの溝を小さくすることができるだけでなく、人事施策を行うために必要となる社内ニーズの把握や相談先として、協力体制を構築することも可能になります。
しかも、任意のプロジェクトと異なり、法定義務なので途中でやめるわけにいかず、継続した取り組みを行うことが可能です。さらに、議事録を公開しなければならないため、周囲の社員とも状況を共有することができます。法令遵守でコミュニケーション改善。まさに「一挙両得」ともいえます。
衛生委員会で取り扱う事項
衛生委員会で審議すべきこととして、「長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止」「精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立」等があげられています。
長時間労働やメンタルヘルス対策に関する事項は、まさに衛生委員会で審議すべきこととして定められているのです。ワークライフバランスを考える上でも長時間労働の削減は必須ですし、メンタルヘルス対策としては、就業規則における休職や復職規程の取扱いはもちろん、パワハラ、セクハラ対策も含まれてきます。心身の健康を考える上では、定期健康診断のみならず、妊産婦への配慮等の女性問題も含まれてくるでしょう。このように切り口を広げてみると、衛生委員会では職場に関連する様々なテーマを扱うことが可能であるといえるでしょう。
他人ごとから自分ごとへ
従業員の興味関心を高めるためには、議題の設定にあたって人事が決めるだけでなく、定期的に従業員から職場環境アンケートをとることや、従業員満足度調査などの結果からピックアップすることも有用でしょう。これによって「人事に押し付けられる」課題から「自分たちの問題としての」課題として参加意識の向上にもつながります。また、職場巡視を衛生委員会メンバーで行ったところ、社内通路に障害物が多いことに従業員自らが気づき、それ以降廊下がきれいになったという例もあります。
このように、社内の問題に対してひとりではなく、皆で関わりあう体制を構築していくと、職場改善等の取り組みも効率的・効果的に行うことが可能になってくるでしょう。
従業員50人未満の会社では衛生委員会の開催義務はありませんが、「安全または衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聞くための機会を設けるようにしなければならない」とされていますので、衛生委員会という形ではなくても、同じことを行う義務は発生します。前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。
次回は実際の衛生委員会活用についてみてみたいと思います。
つづく
※これは「@人事」に掲載されたものです。元記事はこちら。