皆様の会社での健康診断受診状況はいかがでしょうか?
受診率があがらなくて困っている、またはなかなか受診してくれない社員がいるというような状況はないでしょうか?
衛生委員会を活用した具体的な課題解決についてみてみましょう。
現場ヒアリングでつまずきポイントを把握する
健康診断の受診率向上については、おおまかには下記のパターンに分けて対応を考えることができます。
1.健康診断の受診義務があることを知らない場合
2.受診してもメリットがないと感じている場合
3.受診することにデメリットを感じている場合
4.そもそも人事に言われたことは何でもやりたくない場合
これらのどこに問題があるのかを把握するには、衛生委員から現場の声をヒアリングしてもらうことにより、効果的な情報収集と分析が可能になります。そこでポイントが把握できたら、パターン毎の対応を皆で考えることになります。例えば次のような対策が考えられます。
各パターン毎の対策案を考える
1.健康診断が義務であることを知らない場合
人事担当者からすると意外なのですが、健康診断の受診義務があることを、従業員がただ知らなかっただけ、というケースが少なくありません。このような場合には、会社は年に1回定期健康診断を行う義務があること(労働安全衛生法66条第1項)、従業員にも受診義務があること(労働安全衛生法66条第5項)、などを伝えるだけで、納得して受診してくれる場合があります。就業規則で健康診断の受診義務を定めている場合には、改めてそれを紹介することもできるでしょう。
こういった、周知や理解そのものが解決につながるようなものについては、議事録の活用はもちろんですが、まず衛生委員会のメンバーに理解してもらった上で自部署に持ち帰ってもらえるとスムーズです。人事からの業務連絡よりも仲間からの言葉の方が信頼性があるからです。
2.受診してもメリットがないと感じている場合
まず健康診断を受診することの目的やメリットを共有しましょう。健康診断は、従業員の命を守り、長く、イキイキとその能力を発揮してもらうために行うものです。例えば、高血圧と過重労働には関連があるという説が報告されており、その状態が続くと突然死を招く可能性があります。もし健康診断でデータをキャッチできていれば、会社は就業制限等の配慮を行うことができます。健康診断の受診は、命を守ることにつながるという大きなメリットを共有しましょう。
3.受診することにデメリットがあると感じている場合
「健康診断の結果を会社に知られたくない」
「忙しいから健康診断に行く時間がない、営業活動にマイナス」
と考えているような場合です。
結果の提出に不安を感じる従業員については、前述したようなメリットの部分を理解してもらうことや、健康診断で得られた情報について、担当者には秘密保持義務が課せられていること(労働安全衛生法第104条)、それに基づき適切な措置を講じていることなどを伝えて、安心してもらうこともできるでしょう。
業務が忙しくて受診できないという場合は、健診と業務スケジュール調整について理解をえるためのアナウンスや取り組みをすることもできるでしょう。営業活動にマイナスであるという場合は、健康診断の受診有無を人事評価に組み込む、といった踏み込んだ提案も可能でしょう。
4.そもそも人事に言われたことは何でもやりたくない場合
人事と従業員との関係が悪化している場合は、とにかくなんでもかんでも、人事から言われることには反発してくる、というケースがあります。この状態では何をしてもうまくいかないので、だからこそ「社員に自主的に動いてもらうには?」でお伝えしたように、関係構築が重要となってくるのですが、初期にはそれがうまくいかない場合もあります。
このような場合はさしあたって、健康診断の受診勧奨は、人事担当者の業務ではなく、衛生委員会の活動とすることができるでしょう。人事の言うことは聞かなくても仲間の言うことは聞く、というのはよくあることです。人事担当者からの受診勧奨には全く応じなかったが、同僚からの指摘により受診するようになった、ということもあります。直接アプローチが有効でないならばなおさら、周囲の力を巻き込むことを考えてみましょう。
まとめ
これらの原因や対策は一例ですが、社員自身と一緒に考えることによって、自社に応じた現実的な対策を考えることができるようになります。解決すべき課題がある時は、人事の課題でなく皆の課題として相談してみると、ひとりでは思いつかなかった効果が得られることがあります。積極的に力を借りてみるのはいかがでしょうか。
※こちらは「@人事」にて掲載されたものです。元記事はこちら