ひとり人事リカの悩み
「いつも期限を過ぎても提出物が集まらない」
「健康診断の受診率もあがらない。先日送ったメールも読んでもらえているのかどうか」
「事務作業は正しくやって当たり前。間違えば非難されるけど、感謝なんかされたことない(涙)」
リカはソフトウェア開発を行う中小企業の人事担当。経費削減と人手不足の中、人事・総務等の業務をひとりで行っている「ひとり人事」です。そんなリカが、先日の人事向けセミナーで出会って仲良くなったユウコとカフェでお茶を飲んでいました。ユウコは人事歴10年の先輩でもあります。
リカ「ユウコの会社はどう?」
ユウコ「そうねえ。似たような問題はあったけど、ずいぶん改善されてきたかな。」
リカ「どうやったら改善されたの?」
ユウコ「私が気をつけたのは、ルールをしっかり作っておくことと、協力関係を築くことかな。」
リカ「ルールと協力関係??」
ルールをつくる
ユウコ「例えば・・・何でもかんでも聞いてくる社員とか、何回説明しても同じ間違いやトラブルを起こす社員っていない?」
リカ「いるいる!けどさ~、社員に見せられるようなルールも整備されてないから、その都度私が調べて答えるしかないんだよね。この間も、何回代休の説明しても理解してくれない社員がいて。。。」
ユウコ「代休って、法律の決まりもないから、各社でばらばらなんだよね。」
リカ「しまいには、お前が勝手に決めたルールなんじゃないか、って怒り出しちゃったり。」
明確なルールがないと、人事担当者の事務効率が下がるばかりか、社員の側は恣意的に不利益に扱われているように感じ、信頼関係の崩壊につながることもあります。
ユウコ「ひとり人事だからこそ、誰もが納得できるルールや、それを運用できる仕組みをきちんとしておく必要があるのよね。」
リカ「だけど、ルールはあっても守ってもらうのが大変で。どうせ人事のいうことなんて聞いてもらえないし。」
ユウコ「だからこそ、皆に納得感のあるルールの整備と、それを守る社員との協力関係が大事になってくるのよね」
社員との協力関係をつくる
ユウコ「例えば長時間労働対策をしなきゃいけないとするでしょ?そのためには現状把握が必要よね。勤務表は期限内に提出してもらえてる?」
リカ「全然集まらなくて。しかもせっかく出してもらっても間違いばかりで。月初は勤務表の確認と修正で、長時間労働対策以前にデータ収集に振り回されてる状態よ。」
ユウコ「他の社員からみたら、人事とのやりとりなんて「本来の業務外」の「面倒くさい作業」だったりするからね(苦笑)。でもそれをやってもらわないと、その先に進めないのよね。私たちの業務って、他の社員の協力なしには成り立たないのよね。」
・・・あ。リカは今まで、提出物を出すのは当たり前だと思っていました。みんなのおかげで自分の業務ができる。そんな風に考えたことはありませんでした。
ユウコ「仮に無事勤怠データが集まったとしても、その先の対応はどう考える?」
リカ「それも難しいのよね。本やネットの事例はいろいろあるけど、ノー残業デー作ったところで、別の日の残業が増えるだけのような気がするし。」
ユウコ「他社の話が自社に効果があるかどうかは分からないもんね。原因ひとつとっても、実は単なる業務過多でなくてメンタル問題が隠れていたり。一般的な事例を自社で使えるようにアレンジして落とし込むには、相談相手や、一緒に取り組む仲間が必要よね。」
リカ「ひとり人事って、ひとりだけどひとりじゃできないのね。むしろひとりだからこそ、仲間と協力し合って進めていくことが必要なのね。」
とはいえリカの席は、業務の性質上、席も他部門とは別のフロアに設置されており、ただでさえコミュニケーションが疎遠になりがちです。相談できる相手や仲間はいません。では「飲みニケーションだ!」なんて言ったって、スパイと勘違いされるか、一歩間違ったらパワハラ、セクハラにも間違えられかねません。
そんなリカの戸惑いを察するかのようにユウコが言いました。
ユウコ「衛生委員会ってやってる?それを活用してみたら?」
リカ「衛生委員会?いちおうやってはいるけど・・・」
衛生委員会とは
従業員の健康、衛生などについてみんなで話し合う会。労働安全衛生法にて、従業員50人以上の会社で月1回開催すること、議事録を周知することが義務付けられています。
詳しくはこちら(厚生労働省HPへのリンク)
従業員50人未満の会社では、衛生委員会の開催義務はありませんが、「安全または衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聞くための機会を設けるようにしなければならない」とされていますので、義務でなくても、同じことはやらなければならないのです。
リカ、衛生委員会について考える
ユウコ「衛生委員会って、社員側メンバーが出席してるでしょ。現場のことは現場に聞くのよ。議題のマンネリ化も防げるし。それに議事録を公開しなきゃならないから、他の社員とのコミュニケーションツールにもなるのよね。」
リカ「衛生委員会かあ・・・」
これまで何となく形だけやっていた「衛生委員会」の言葉が改めてリカの頭に残りました。
つづく。