定年再雇用後、正社員⇒嘱託社員などに切り替わった場合の有給休暇の取り扱いについてご存じでしょうか?
「一旦定年退職するんだから有給休暇もリセットでいいよね。退職金も払ったし」
そのようにお考えの人事担当者の方はいらっしゃいませんでしょうか?
定年再雇用にあたっては、定年に関する従業員への説明、再雇用後の条件設定、年金の説明、雇用保険や社会保険の手続き、新しい賃金の設定や社内のポジション再検討など、やらなければならないことが沢山ありますね。
その中で、勘違いされることの多い有給休暇の取り扱い。実は、定年退職のタイミングや再雇用後の条件によって、有給休暇の日数の数え方が大きく変わってしまうことをご存じでしょうか?
定年再雇用した場合の年次有給休暇はどのように与えたらよいのでしょうか?
高年齢者雇用安定法により、少なくとも65歳までの安定した雇用を確保しなければならないことになっています。令和3年4月1日からは、さらに70歳までの就業機会の確保が努力義務とされることになりました。
定年を引き上げることはなかなか難しいので、定年は60歳のままで、その後は嘱託社員等として、1年毎の期間雇用に切り替えたり、勤務時間や日数を変更して、身分を変えて雇用を継続することで対応するケースも多いです。
ここで問題になるのが、正社員⇒定年後の有給休暇の取り扱いです。
■定年時点で有給休暇は全て消滅してしまうのでしょうか?
■定年時に全て有給を買い上げなければならないのでしょうか?
■定年後は改めて6ヶ月たたないと有給休暇が発生しないのでしょうか?
身分が変わっても、雇い続けている限り有給休暇は継続して考える
たとえ一旦定年退職したとしても、形が変わっても、そのまま雇い続けている場合は、有給休暇については継続して考えることになります。
具体的には、定年前からの残日数を引き継ぎ、定年前と同じ付与日に、定年前からの勤続年数で新しい日数を付与する、ということになります。
定年前と定年後とで勤務日数が変わっていたら有給休暇の日数はどうなる?
年に一度、有給休暇が与えられる日のことを「付与日」といいます。
付与日は、個人毎に異なる場合もありますし、会社毎に「4/1」などと決まっている場合もあります。
有給休暇の付与日数は、この「付与日」時点の所定労働日数によって決まります。。
定年後は、週の労働日数を減らすよう、契約を変更する場合もありますが、あくまで、付与日時点の契約がどうなっているか、です。
仮に、定年後、再雇用まで数日契約上の日にちが空いたとしても、実態の雇用が継続している場合は、有給休暇の付与についても継続して扱われますのでご注意ください。
4/1が有給休暇の付与日の場合に、定年再雇用された日が3/1と5/1の場合の大きな違い
2月末に定年を迎えるAさんと4月末に定年を迎えるBさん。
2人とも、定年後はもう少しのんびり働きたいな~と、週2日勤務に変更する予定です。
2人とも働き者なのでこれまで有給休暇なんてほとんど使ったことがなく、たっぷり余っています。
この2人の定年後の有給休暇はどうなるのでしょうか?
ポイントは、「付与日時点の条件(所定労働日数、年数)で新しい有休日数が付与される」ということです。
たとえば、AさんとBさん、勤続年数は10年以上、付与日は4/1、昨年分の有給休暇は20日以上余っているとします。
Aさん:
3/1に週の所定労働時間が2日に変更されているので、
4/1に新規に付与される有給休暇は7日となります。
昨年からの繰越分とあわせて27日使用することができます。
Bさん:
4/1に有給休暇が20日分付与されます。
5/1に週の所定労働時間が2日に変更されていますが、翌3/31までは、すでに付与された20日分の有給休暇をそのまま使用することができます。繰越分とあわせて40日分使用することができます。
ほんの2ヶ月の差でも、日数に大きな違いが生じてしまうのですね。
今回は定年再雇用のケースを取り上げてお話しましたが、パートやアルバイトから正社員に転換する場合も、考え方は同じです。
実はこの有給休暇の取り扱い、とても間違いやご相談が多いものの一つなのです。
ここまで読んでいただいたあなたは、いま、もやっとしているのではないかと思います。
ほんの2ヶ月の差でこんなに違いが生まれてしまうなんて。にわかに信じがたい。ほんとにそれって正しいの?お気持ちよく分かります。
労働基準法には、このように「信じがたいけどそう決まっている」というようなルールもあるのです。
働く上でのルールは概ね就業規則に記載がありますが、全てが記載されているわけではありません。だいたい作った時点でそんなところまで想定されていません。また、厚生労働省のパンフレットでもここまでは触れられていません。
このような、ネットや行政パンフレットではなかなか出てこない話、または、ネットで見かけたけどにわかに信じがたい、ほんとかウソか判断できない、というような課題についての相談先はありますか?
このような、モデル就業規則では出てこない話、や判断に悩むケースについての個別具体的な相談ができるのが、社会保険労務士です。
あなたの会社では「就業規則はあるけどこんな場合にどうしていいか分からない」「ネットの情報、ほんとにこれって正しいの?うちの会社にも当てはまるの?」といった場合に「あなたの会社のための答えを探す」ための相談相手はいますか?
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