長時間労働を削減するには?~衛生委員会の活用4~

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長時間労働を削減するには?~衛生委員会の活用4~

長時間労働対策と衛生委員会との関わり

長時間労働に対する労働基準監督署の調査が厳しくなっています。ひとり人事としても対策を取りたいところですが、人事主導で進めようとしても苦戦してしまうのが現状ではないでしょうか。なぜなら、実現可能な対応を行うには現場を知る必要があるにもかかわらず、日常業務では現場との接点が少ないからです。

本やネットからノウハウを集めたとしても、それは机上の空論でしかありません。現場の人間にとっては「人事がまたわけのわからないことを始めた」「かえって迷惑」といった状態にも陥りがちです。仕入れたノウハウの何が使えるのか、効果があるのか。自社での運用を考える際には、現場を知る協力者が必要です。「長時間労働対策チーム」などを立ち上げて対応できればよいのですが、取り組み初期の段階では予算と理解が得られないことも多いでしょう。

そんな時こそ、衛生委員会が活用できるのです。「長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること」については労働安全衛生法にて衛生委員会の審議事項とされていますので、堂々と取り扱うことができます。では、いったいどのように取り扱うのでしょうか?

労働時間管理のミニ研修の場として

そもそも長時間労働の何がいけないのでしょうか?会社や従業員自身にはどんな影響があるのでしょうか?労働基準監督署が来る、従業員が死亡してしまう、36協定…などなど。

日頃、人事がやきもきしていても他の従業員が知らない労働時間管理について、まずは衛生委員会のメンバーに理解してもらいましょう。本来は管理者層をはじめとする全従業員にも理解してもらう必要があるのですが、さしあたって対象者を絞ったミニ研修のようなものです。ここで必要性を感じてもらえれば、他の管理者へのライン研修等につなげることも可能になりますし、そのための会社との予算交渉もやりやすくなります。

時間外労働、及び取り組み状況を定例の報告項目にする

簡単にできる取り組みとしては、月1回の衛生委員会の定例事項として、部署ごとの時間外労働の状況を集計して報告するなどがあげられます。可視化して共有するだけで、場合によっては労働時間が減ることもあります。その上で、ひと月の時間外労働が80時間以上、100時間以上など、一定を超える場合には、本人の希望がなくても産業医面談の対象とすることもできるでしょう。長時間労働者に対するケアができるばかりでなく、「産業医面談」といわれると従業員は面倒に感じることもあるため、自主的に時間外労働を減らそうとする可能性があります。もちろん、残業時間が数字だけの操作とならないように注意が必要です。

毎月報告を続けて行くと、次第に会社ごとの傾向が現れてきます。例えば、ある特定の部署だけ、ある一定の時期だけ、ある特定の人だけ、長時間労働が発生している、等々・・・

こうして状況と傾向が共有されてくると、具体的な対応の検討がやりやすくなります。部署間での人の貸し借りが可能になったり、社内業務で影響の少ないものについては納期の配慮を行ったり、というような横の協力関係が生まれることもあります。

衛生委員会と就業規則の改訂

ある会社では特定の部署だけ長時間労働が発生していました。この状況について衛生委員会にて検討したところ、その部署の業務の特殊性から不規則勤務が発生せざるをえないにも関わらず、就業規則がそのための時間管理に対応していないためにルールが形骸化しており、自主的シフト勤務や独自ルールの乱立による従業員間での連絡の行き違いなど、非効率的な作業が発生していることが分かりました。勤怠の乱れそのものは人事でも把握しやすいのですが、その原因や周囲への影響を把握するには現場とのコミュニケーションが必要になります。就業規則の改訂にあたっては現状にあった労働時間管理を取り入れ、代休取得や時間外労働を行う際のルールを明確にすることにより、その会社では時間外労働の削減につなげることができました。

また別の例では、長時間労働対策としてフレックスタイム制の導入を検討していたところがありました。衛生委員会の場で意見を募ったところ、実は従業員側はフレックスタイム制を望んでおらず、業務遂行上も好ましくないという結果になり、とりやめになったということもあります。

労働時間管理のためには就業規則その他のルールの改訂が必要になることがありますが、効果的なヒアリングが可能になるほか、導入後の運用フォローも容易になります。

※この記事は「@人事」にて掲載されたものです。元記事はこちら。

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