「従業員を解雇したい」
「会社に解雇された」
というご相談はよくありますが・・・
解雇、退職勧奨、辞職
自己都合退職、会社都合退職
これらが混同されているケースがよくあります。
【退職そのものの4つのパターン】
退職、解雇については、大まかにパターン分けすると下記のようになります。
1.解雇
2.合意退職(会社からの)
3.合意退職(従業員からの)
4.辞職
1.解雇
会社から一方的に従業員に辞めてもらうことです。
従業員の意志や選択の余地はありません。
一方的に労働者の身分や賃金を奪うわけですから、法律上、いろいろな制限をうけます。
解雇を行う際には、その「手続」と「理由」の2つの要件が満たされている必要があります。
■「手続」について
30日前に解雇予告を行うこと、または所定の解雇予告手当を払うこと
■「理由」について
解雇をしなければならないほどの客観的、合理的な理由があるかどうか、社会通念上相当であるか
ということになります。
手続については白黒はっきりわかりやすいのですが、理由については、「客観的」「合理的」「社会通念上」ということが非常にあいまいなため、トラブルになりがちです。
だからこそ就業規則で、解雇の対象や要件について定めておくことが重要になります。
2.合意退職(会社からの)
会社事情による合意退職、または「退職勧奨による退職」というような言い方をすることもあります。
会社からの「辞めてください」のお願いに対して、従業員は「はい、いいですよ」と応じることです。
一応、従業員の側に断るかどうかの選択肢があり、最終的には退職に「合意」していることになります。
この場合は「解雇」にはあたらないので、解雇予告手当や合理的理由等の要件が必要なくなるということになります。
ただし、この場合も、事実上の退職の強要(実態として断れない状況だったよね)である場合は、解雇とみなされる場合があるのでご注意ください。
3.合意退職(従業員からの)
従業員からの「辞めさせてください」のお願いに対して、会社が「はい、いいですよ」と応じることです。
退職のお願いをすることになるので、退職「願」を出すことになります。
これが一般的な、従業員からの退職のパターンかと思われます。
退職願はあくまで「お願い」なので、会社側が受理しなければ退職は成立しないということになります。
4.辞職
従業員が一方的に会社を「辞めます」と意思表示することです。
会社の意向に関わらず、一方的な意思表示なので退職「届」を出すこととなります。
誤解を恐れずに言えば、「退職届」を提出すれば、従業員は一方的に会社を辞めることが可能になります。
従業員に突然いなくなられるのは困るので、就業規則では退職の意思表示については「1ヶ月前」などど決められていることが一般的ですが、この場合でも退職の意思表示をすれば、最短で2週間後には、退職が成立することとなります。(期間の定め無し、の代表的な正社員の場合です。期間雇用、時給、日給等により条件は異なりますのでご注意ください)
よって、会社としては、このパターンで一方的に退職されてしまわないよう、日頃からの信頼関係、人間関係の構築が大切となります。
【会社都合退職?自己都合退職?】
よく皆さんが気にされる「会社都合退職」「自己都合退職」、これらは上記の退職のパターンとはまったく異なるもので、主にはハローワークで失業手当の受給の判断に際して使用される概念です。
おおざっぱにいえば、労働契約の解約において、言いだしっぺがどちらであるか、で判断できます。
■いわゆる「会社都合退職」 →言い出しっぺが会社
退職のパターンにおける「1.解雇」「2.合意退職(会社からの)」が相当します。どちらのケースも、会社側が言いだしっぺとなる退職であるからです。
従業員からみると、解雇でなくても失業手当を会社都合扱いでもらえる。
事業主からみると、助成金受給上「事業主都合の離職」を発生させることになる。
ということになります。
■いわゆる「自己都合退職」 →言い出しっぺが労働者
退職のパターンにおける「3.合意退職(従業員からの)」「辞職」が相当します。どちらのケースも、労働者側が言いだしっぺとなる退職であるからです。
ひとくちに退職といってもさまざまなパターンがあり、状況を正確に判断することによって対応が異なってきます。細かく言えば、上記のどこにも当てはまらないパターンというのも実はあります。
それぞれのパターンにおいて何をすべきか何をすべきでないかは、専門家の慎重な判断が必要になる場合がありますので、ご相談されることをお薦めします。
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※「合意退職」「辞職」等は、法律上明確に定義された用語ではなく、一般的にこのように使われることが多い、というものになりますのでご注意ください。でもそれぞれの区分の内容と意味は同じです。